あなたと私のカネアイ
「意地っ張りというか、頑固でね。私たちの言うことなんて聞かないのよ」

 ああ、また始まった。
 私はうんざりした気分で目の前のティラミスにフォークを刺す。これは、円さんが家に来る途中で買ってくれた手土産。もちろんティラミスは私の希望。
 本当はグサッといきたいところだけど、この状況では大人な振る舞いをしないといけないだろう。

「わがままで、お姫様気質っていうのかしら――…」

 お母さんの「娘のことは私が一番理解している」演説は私のティラミスがなくなるまでに終わるだろうか?
 ココアパウダーがいつもより苦い。
 謙遜とは、何て不快な美徳なんだろう……そう思うのは、変なのかな。

「――でも、円さんがそんな結愛を気に入ってくださっているのなら心配ないわ。よろしくお願いしますね」

 お母さんが頭を下げ、円さんもそれに倣う。
 わざとゆっくり食べた甲斐もあって、私は苦痛の時間をほろ苦いティラミスと共に乗り切ることができた。
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