あなたと私のカネアイ
 そんな円さんの家に連れてこられたときの私は、いわゆる高級マンションという場所に足を踏み入れたのが初めてで、驚いていた。
 彼の実家は普通より少し大きいお家という感じだったから、油断していたというか……
 私の様子を見て、円さんは「ちゃんとお金持ちっぽいでしょ?」と笑ったけど。
 エントランスにはフロントがあってコンシェルジュもいたし、ラウンジはホテルみたいだった。屋上も緑があって天気のいい日は気持ちよさそう。
 ワンフロアの間取りは3LDK、マスタールームは円さんの部屋で二つある七畳の部屋のうち一つを書斎として使っているとか。そんなわけで、もう一つの空いていた部屋を私へと宛がってくれた。
 バスルームとトイレは円さんの部屋についているものと、別にもう一つあるからそちらは私専用にしていいとも言われた。
 バスルームには広いパウダールームがくっついてる。
 リビングもキッチンも、とにかく「広い」の一言。白くて大きなソファとお洒落なガラステーブル、テレビは映画も大迫力で見られそうな大きさでスピーカーもある。
 リビングと三つの部屋からはバルコニーにも出られるようになっていて少し外にも出たけど、夜景はビルの光が綺麗だろうな、と想像できる見渡しだった。
 収納スペースもそれぞれの部屋に十分あるし、マスタールームにはウォークインクローゼットというやつまでついていた。

「お金、か」

 やっぱりお金が物を言うんだ。ここの家賃がいくらするのかは聞かないでおこう。
 引っ越してくる前は半分払うと申し出たのだが、円さんには断られてしまったし、自分の安月給でここの家賃の半分が払えるかも微妙だ。
 円さんは、ご両親の仕事の伝でここも安く借りているとは言っていたけれど。
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