あなたと私のカネアイ
「結愛」

 それから、正直過ぎるくらい裏表のない性格がいいなとか、寝起きのぼんやりした姿も可愛いなとか、好きっていう気持ちは大きくなったと思う。
 意地っ張りなところも構いたくなっちゃうんだよね。
 よく考えたら、これは重症だな。
 でも、父さんの気持ちはわかるようになったかもしれない。

「結愛」
「……るさい」

 やっと反応してくれたけど……また怒らせたかな。
 でも、今日は引かない。ゆっくり進めようと思ってたけど、結愛の愛情不足はちょっと深刻みたいだから、もう少し強引に行かせてもらうよ?

「結愛、手繋いで寝よ」
「人の話、聞いてた?」
「うん。聞いてた。結愛が俺の話を聞いてたみたいに」

 そう言って、結愛の布団へと手を伸ばすと、その気配を察知した彼女は素早く転がって俺から離れた。
 布団からはみ出てる妻はなんだか可笑しくて、クスッと笑いが零れる。でも、夏とはいえ冷房もつけてるし、布団には収まった方がいいと思う。

「結愛、寝れないんでしょ? 幽霊の話なんかするからだよ」
「信じてないって言ったでしょ!」

 結愛がぶつぶつと言いながら起き上がって自分の布団を引っ張ろうとするから、俺も起き上がって彼女の布団を引き寄せた。
 当然、俺の方に布団は引きずられる。
 俺はそのままバランスを崩した結愛の手も掴んで自分の方へ引っ張った。

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