あなたと私のカネアイ
「別に結婚してるんだし、その辺はいいんじゃない? 向こうのご両親は、あんたたちのことを夫婦だと思ってるわけでしょ?」
「……うん」

 うちの両親にも結婚以前それなりに付き合ってたってことにしてある。お母さんは私がそんな素振りを見せたことなかったからちょっと驚いてたけど。

「あんたもさー、もう二十四なんだし、理由はあれだけど結婚したわけだし、大人になったら? 新婚二ヶ月だっけ? そろそろ、円さんもつらいんじゃないの」
「私たちは普通の夫婦じゃない。そういう約束なの。だから、そういうのは他で――」
「あんた、まさかそれ円さんに言ってないでしょうね?」

 昨夜の円と同じように私の言葉を遮った佳織は渋い顔をしてる。

「言ったわよ。二回も言ったのに……」
「最低なのはあんただわ」

 首を何回か横に振って呆れた仕草をする目の前の友人にカチンと来て、私はムッと頬を膨らませた。

「なんでよ!」
「なんでもよ! 新妻に『不倫して来い』って言われる夫がこの世界のどこにいるのよ! バカじゃないの!」
「だって……」

 好きじゃない人とはしないとか言うつもりはない。そういうのは本人が良ければいいと思うし。
 でも、私は違う。誰でもホイホイってわけじゃない。自分の身は大切にしたいし、そういうことをしたら……子供ができる可能性だってゼロじゃない。
 私は、自分に真っ当な子育てができるとは思わない。結婚だってお金のためにしたようなものなのに、こんな女に育てられる子供が可哀想だ。

「結愛、そろそろ石橋叩くのやめれば?」

 佳織はもう一度ため息をつくと、少し柔らかくなったトーンで言った。
< 69 / 166 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop