あなたと私のカネアイ
「結愛、さすがに酔い過ぎ」
「そんなことないよ」

 まぁ、キスしようなんていう思考は酔ってなかったら出てこないし、ある意味酔った勢いだけど。
 佳織の言うことも一理あるかなって思ったのは本当だ。

「私が円とキスできなかったらさ、それ以上も無理だから。そしたら、円も諦めてくれないかなって」

 すると、円は肩を竦めてため息をつく。
 明かりに慣れてきた目には、呆れたような表情がぼんやりと見えた。
 それが一気に近づいてきて、真剣な眼差しと視線が合う。鼻先がくっつきそうな距離、視線を少し下にずらすと、綺麗で上品な唇。やっぱり、口元はあの俳優さんに似てるかも。

「できた場合のこと……考えてないでしょ?」
「え……? ぁ――」

 ちゅっ……と。
 柔らかな感触は、私の左頬を掠めて行った。呆然と頬を押さえて円を見上げる私を、彼は面白そうに目を細めて見てる。

「キスは、花火大会って言ったでしょ?」

 考えてなかったというより、ありえないと思ってた。どこから沸いてくるのかもわからない自信があった。
 でも――…

「どの花火大会行こうか、一緒に考えたかったのに……結愛が全然帰ってこないから、まだ決められてない」

 再び私の手を引いてマンションへと入っていく円の言葉は、頭に入ってこなかった。
 私……
 今、円の顔に、唇に、見惚れた――?

 頬にキスされて、嫌じゃなかった――
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