あなたと私のカネアイ
「結愛、ちょっとおいで」
「え……」

 フッと息を吐き出した円は私の手を引いてリビングへと入った。だけど、ダイニングテーブルではなくて、ソファに座る。
 いつもより近い距離――ソファの中央で向かい合うように座らされて、両手を握られた。その手は円の膝の上へと誘導される。

「目、瞑って」

 そう言われて、今の状況を改めて把握したら、急に怖くなった。
 私、今……何も抵抗しないまま、円についてきちゃった。

「や、やだよ。手も離して! ご飯、できてるんでしょ。お腹空いた」

 素直に目を瞑ったりしたら、何をされるかわからない。

「いいから。目、瞑ってごらん」
「やだってば!」
「結愛、早く」

 私が手を引いて、円が更に強く手を握って……「早く」と「嫌だ」の争いになる。

「じゃあそのままでもいいよ」
「っ、ちょっと!」

 円は私の両手首を片方の手でまとめて掴むと、右手を私の頭に乗せた。びっくりして首を竦める私にも構わず、そのまま彼の手は私の頭を撫でる。
 一体、何だっていうの……

「ごめん」

 突然の謝罪だったけど、なぜか安心して身体の力が抜けた。
 円は私を傷つけようとしているわけじゃないとわかったからかもしれない。
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