あなたと私のカネアイ
「結愛は、迷惑かけていないか? 扱いづらい娘だろう」
「迷惑なんてかけられていませんよ。結愛さんは仕事で疲れていても家事はきちんとしてくれますし、僕の仕事にも理解があって助かっています」

 仕事で疲れていても家事をしてくれるのは円の方だ。仕事に理解があるというよりも、興味がなくて干渉しないだけ。
 やっぱり、私と円は普通の夫婦じゃない。そう思ったら、なんとなく心がもやもやとした。

「仕事か……海外留学までさせたのに、宝石の販売なんて仕事に就いてしょうもない」

 始まった……
 ギュッと拳を握ってテレビに集中しようとするのに、今日一日で蓄積したイライラのせいか、聞き慣れた文句が何倍も大きく聞こえる気がする。

「俺はしがないサラリーマンだっていうのに、高校も大学も私立に行かせてなぁ……子供の教育は投資みたいなもんだろう? それなりに優秀だったから期待してたんだが、こんなに損するとは思わなくてな」

 何がそんなにおかしいのか。はははっと笑うお父さんを睨みつける。この人は、私の神経を逆撫ですることだけはうまいんだ。

 投資? 今まで掛かった教育費を返してもらいたいだけのくせに。期待してるなんて親っぽい言葉を選んでたって、結局私を育てて掛かったお金が多くて損したって言いたいだけなんだから。
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