本当はね…。

結局、私とユキ先輩のチームと残りの3人のチームに分かれ、ボーリングが始まった。
「じゃぁ、俺からな。」
トップバッターは佐々舞尋。
正直、このチーム分けは失敗だと思った…。
「あの人…なんだかんだで、なんでもできちゃうんだよね…。」
なんでもそつなくこなすのがこの男なのだ。

ーガシャァンー

「おっ、最初からストライクなんて舞尋らしいな。」
カオル先輩が相変わらずの爽やかスマイルで、戻ってきた佐々舞尋とハイタッチ。
…おいおい。手加減しろや。
内心思ったが…。綺麗なフォームだったことに違いはない。文句無しだ。
まぁ…別に楽しきゃ良いんだけどね…。
「じゃぁ、次そっちのチームだね。」
ミサキ先輩の言葉で立ち上がったのはユキ先輩。
……?なんか…雰囲気さっきと違くない?
「じゃぁ、先に僕が行くね。」
不思議そうに見つめる私の方に振り返って微笑んだユキ先輩は、いつもと変わりない様子だった。……気のせい…かな?
私はただボールを持って構えるユキ先輩の後ろ姿をぼんやりと見ていた。
そして…っ

ーガシャァンー

…………。
「さすがユキ。舞尋のフォームも綺麗だったけど、ユキはその上をいくね。」
……え。
「まぁ、ユキだからな。」
………え。
「俺、このチーム分け失敗だと思うんだけど…。七瀬とユキって…ほぼ反則だろ。」
…………。
ユキ先輩…貴方何者ですか⁉
「やったぁ。チサちゃん‼ストライクだよっ‼見てた?見てた?」
驚く私のところに嬉しそうに帰ってきたユキ先輩。
「み、見てましたよ。すごかったです。」
…色んな意味で…。
「ホント⁉嬉しい。ふふっ。」
まぶしすぎるくらいの笑顔。可愛らしい見た目からは想像できないくらいの運動神経だ…。
今日の私……メンタル持つのかなぁ…。
序盤から不安です……。
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