本当はね…。

……
「やっぱり…。」
生徒会メンバーで到着した先は、予想通りの…。
「バスケですよね…。」
予想はしてたが、当たってしまったらそれはそれで…なんか…はい。
どおりでカオル先輩がウキウキしてたわけだ。そんなに好きなんだ…バスケ。
「チームはどうするんですか?」
5人だから、2対3になるけど…。1人審判とか?
…なんて考えていると…。
「これは個人戦だけど?」
「…え。」
当たり前のような顔で言う佐々舞尋に、思わず素で返してしまった。
…何を基準に個人戦とチーム戦を決めているのか…。よくわからない。
「んじゃ、早速っ‼」
佐々舞尋がバスケットボールを近くのカゴから取り出し、カオル先輩に投げて渡した。
「あ、俺から?」
爽やかな微笑みを変えることなく二回ほどドリブルをつくカオル先輩。
…待って。カオル先輩って現役バスケ部ですよね?しかもエースとか聞いたような…。
「じゃぁ、ジャンケンだべ。」
ボールを持つカオル先輩以外のメンバーが佐々舞尋の掛け声で円くなる。
私も例外なしに加わろうとした。すると…。
「あ、チサちゃんはいいの。シードだから。歓迎会だしね。」
……。
「じゃ、負けたやつがカオルの相手な。」
……。シード?私が?待て待て待て。歓迎会=シードなの?優遇された気がしねぇ。…まぁ…いいのかな?
一人でなんとか消化した。
「えぇー。僕?カオルの相手とかぁ、やだぁ。」
声からしてユキ先輩が負けたようだ。
「頑張れぇ。ユキの本気見せて来いよっ。」
勝った二人はニコニコしながら凹むユキ先輩に手を振っている…。他人事…。
「まぁ、いいや。カオルとは初めて戦うし…。」
案外乗り気なユキ先輩であった…。
「おっ。ユキが相手か。油断できないな。」
ユキ先輩がコートに入るとカオル先輩がまた笑った。…でも、なんか2人とも雰囲気がいつもと違う。
「あいつら…本気になると目ぇ変わるよな。雰囲気も。」
いつの間にか私の両隣にミサキ先輩と佐々舞尋がいて、ミサキ先輩が腕を組みながらそう言った。
やっぱり…並じゃないんだ、あの二人。
コートの横に並ぶ私達さん人。
ルールは簡単。先に3回ゴールを決めた方が勝ち。
「カオルは経験者だから僕からね。」
ユキ先輩が何か言ってからボールを受け取ってゲームが始まった。
いきなりユキ先輩がドリブルで中に切り込む。
「すごっ…。」
思わず息を飲んだ。
……でも、わかる。ユキ先輩は十分速い。ただ……カオル先輩の方が速い。
「おっ、ユキ、シュート打ったぞ。」
佐々舞尋の声が聞こえたが、結果はわかった。
ユキ先輩の手から離れたボールは綺麗に弧を描きながらゴールへ向かう。…が。
ユキ先輩の目が大きく開いた。それもそのはず。決まったと思ってもおかしくないシュートだ。…でも。カオル先輩の身長、スピード、瞬発力、そしてセンス。シュートカットだ。ゴールへ向かうボールにのびたカオル先輩の手はしっかりとボールをつかんだ。
「あんなんアリか?」
驚きながらも楽しんでいる佐々舞尋。…子供か…。
でも、おそらくアレはカオル先輩にしかできない。
…やっぱり、すごい。そして…。
「もぉ。カオル本気じゃん。」
膨れて見せるユキ先輩に…。
「これくらいしないといくらバスケ初心者だとしてもユキには勝てないからな。」
笑って応えるカオル先輩。
「…はぁ。僕、本気出すの好きじゃないんだけど…。でも、負けるのはもっと好きじゃないからさ。」
ニコニコしてるユキ先輩だが、やる気が増したことに変わりはない。
……なんか、見てるこっちも楽しい。そんでもって、すごい。
この人達は、楽しんでいる。だからこそ、こっちも楽しい。
なんか…ドキドキするよ。

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