本当はね…。

リビングに行くと、残りの三人はキリが良いところだったらしく…。
「あぁー‼オムライスだぁ。すっごく良い匂いしてたんだぁ。オムライスの匂いだったんだねぇ。美味しそぉ。」
真っ先に食いついてきたユキ。
「チサちゃんが作ったのぉ?僕ねぇ、オムライス大好きなんだぁ。」
ただ…。リビングに先に入った俺じゃなくて後からきた七瀬の方へ迷うことなく走り寄って行くなんて行動は…ユキにしか出来ない。恐ろしいよ、本当に。
「二人とも、ありがとう。声かけてくれれば俺も手伝ったのに。」
「…いや、いい。カオルは気持ちだけでマジ十分。」
こいつは…本当に良いヤツなんだけど…難点をあげるとするなら自立しすぎてるということだ。
「ふぅーん。そういうことね。」
ユキに絡まれる七瀬を見てから俺に視線を移すミサキ。……なんだよ。
からかう気満々のミサキの雰囲気を察知した俺は無言でオムライスをテーブルに並べる。
それが面白くなかったのか…。
「二人っきりってドキドキするね。」
二人っきりの部分が妙に強調されて届くミサキのチクチクした声。不覚にも反応してしまった。
「うっせぇな。お前が思ってるようなことはしてねぇよ。」
七瀬に聞こえないような声で話す俺。
「へぇ…。僕が想像してることってどんなこと?例えば?」
明らかにハメられた。ミサキの表情はみるみる腹黒さを増していく。
コイツは…っ‼‼
「馬鹿野郎‼言えるわけねぇだろ‼何考えてんだお前は。」
顔が熱い。今見たら多分真っ赤だ。
「何考えてんだは、僕のセリフでしょ。舞尋こそ何考えてんの?そんなに顔赤くしちゃって。い〜や〜ら〜し〜。」
「なっ…‼‼‼‼ちっげぇよ、バカ‼‼」
100%の自信を持って否定出来なかった。だから余計に大きな声が出てしまったのだ。
「どうしたのぉ。舞尋?またミサキにからかわれたのぉ?ダメだよミサキ。舞尋は嘘つけないからぁ。」
俺の声に全員の視線が集まった。
もちろん七瀬も例外じゃない。
………またミサキにやられた。
ミサキは腹抱えて笑ってやがる。…相当ツボに入ったらしい。
くそ。俺で遊びやがって…。この幼馴染は小悪魔レベルじゃすまねぇよ。
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