本当はね…。

生徒会室の扉に手をかけた。
その時…。
「理由があったら良いのか?」
静まり返った生徒会室に、聞き慣れた声が響く。
振り返らなくてもわかってしまう。声の主が…。
「舞尋?」
ミサキ先輩が驚いたように佐々舞尋に視線を向けた。
「なんで招待したかの理由がわかれば、生徒会に入るのか?」
振り返った私を真っ直ぐに見つめる佐々舞尋の視線から逃れることができなかった。
「それは…。」
言葉を続けたいのに、胸の奥が苦しくてたまらない。
この人は…、知らない。私が…どうしてこの学園に来たか。
そんなことわかってる。だけど…消したはずの感情が、こういう時に限って込み上げてくるのだ。そして、それは止まることを知らない。
「…らないくせに…。」
喉のおくから絞り出したような小さな声。
「え…?」
生徒会全員の視線がこちらに向けられいることがわかる。
「知らないくせに…勝手なことばっかり…。」
なぜか悔しくて顔をあげられなかった。下唇に歯を立てながら、自分の拳に力が入っていくのがわかった。
「千咲ちゃん?」
様子がおかしいと思ったカオル先輩は立ち上がって私の方に向かって来た。
「来ないでくださいっ‼」
ほぼ叫び声に近い私の声にカオル先輩の足音が止まった。
「もう…嫌なんです…。」
思わず漏れた本音。
「七瀬?」
佐々舞尋の声で本音が漏れたことに気づく。ダメだ。
「何が嫌なん…」
「とにかくっ‼……私は入りません。」
佐々舞尋の言葉を遮るように言葉を重ね、逃げるようにして一礼してから私は生徒会室を後にした。


これで良かった。これで…。
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