Second Light
「今度は何の文庫本を読んでるの?」
あえて返事はせず、トラが手にしている本に視線を向ける。
「『金木犀の木漏れ日』ってやつだ。
この本の作者が前回書いた本がなかなか興味深くて。
今回、新作を買ったけど……イマイチかもしれない。」
トラは本が好きだ。
よく文庫本を持ち歩いて読んでいる。
死体の上でも、暇なら読むのだろう。
「そう。じゃあね。」
それからは、トラは返事をせずに私を見つめた。
「お前の目ーーーまた戻ってるぞ。」
その言葉だけで十分だ。
何を伝えたいか、わかった。
トラなりの気遣いなのだろう。
--余計なお世話だ。