紅炎と雷炎 ②


美樹「大好きだったやつに裏切られて、信用できなくなるなんて普通だとあたしは思うって言ってんの。 あたしだってそんなことされたら、信じることなんてできないかもしれない。 でも、あたしを信じて過去を話してくれたんだろ? なのにあたしが千尋の過去を聞いて笑うわけないじゃん! あたしは自分で"単純”って小さい言い方したから笑ったんだ。 分かった?」


あたしは笑顔で言ってやった。


千尋「…ふふ。 あはははは! お前、変わりすぎだろ。 ははは…」


美樹「千尋、ひとつ聞いてもいい?」


千尋「ふふっ…! なん、だよ…はははは」


つぼに入った?


美樹「彼女が敵対してる族の彼女って分かったときどうしたんだ?」


千尋「どうって…、普通に『もう、喋りかけんな。 顔もみせんな。 俺の前に現れんな』って言ってやったけど? ……ふはっ!」


いつまで笑ってんだ…。


美樹「ふ~ん、辛くなかったの?」


千尋「そりゃ、辛かった…ははっ。 けどさ~…ぷぷ」


美樹「じゃあ、なんで笑ってるの? 無理してるの?」


あたしのこの言葉で千尋は笑いを一瞬だけ止めた。


けど、また笑いだした。


美樹「自分で言ったよね、一生一緒にいたいほど愛してたって。 それをなくしたのに、さっきの話だと泣かなかったってことだよね?」


千尋「ふふ…。 だって、みんな怒ってくれた。 なんだあの女!って…。 もうあの女のことは忘れろって…! 怒ってくれたんだ! 俺はそれが嬉しかった。 おれのために怒ってくれることに…。 そんな状況で誰が“辛くて泣ける”かよ!」


そう言ってる千尋の目には涙がたまっていた。


スッ


あたしは千尋の頭と腰に手を回して抱きしめた。


美樹「誰も千尋が“辛くて泣いても”怒らないよ。 だから無理しなくてもいい。 これは翔にも言ったけど…

泣きたい時は思い切り泣けばいい。 そのかわり泣いた後に思い切り笑えば…ね?」



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