生意気なKiss
「あっセンパイ亀!亀いますよ!」
「え?どこ?」
「ほらあそこ!」
あたしと真木が来たのは水族館。
なんでも最近できたばかりで、国内でも大きい方らしい。
「俺、海亀って初めて見たー」
「あたしも」
ていうか水族館なんて随分久しぶりだ。
久しぶりの水族館は、なんだか幻想的で。
水槽の中で泳いでいる魚たちがなんとも気持ちよさそうで、羨ましい。
「綺麗だな…」
思わずそう呟いた時、ドンッと後ろの人がぶつかってきた。
突然のことでグラッとバランスを崩すと、隣から伸びてきた腕に力強く腰を引き寄せられる。
「っぶな…大丈夫ですか?」
「…え、あ、あぁ、だっ大丈夫!!」
真木の声が耳元で響いて、あたしは思わず慌てて真木の胸板を押した。
「……」
突然逃げるような行動をとったあたしを、ちょっとびっくりしたように真木が見つめる。
「…あ、わ、悪い。…」
無言の真木が、不意にあたしの手を握った。
「っえ?」
「人、多くなってきたんで。
はぐれちゃマズいでしょ」
そしてそのままグイグイあたしを引っ張って歩いていく真木。
「…っ」
…ダメだ。
今日のあたしは、いつもに増して真木のことを意識しまくっちゃって
手を繋いだだけなのに、心臓が壊れそうなくらいドキドキしてる。
このままであたし
本当に真木と一泊なんて、できるんだろうか…