生意気なKiss




「春の海っていうのもいいもんですねー」


「…おう」




ここの水族館には展望台があって、そこから海を一望できるようになっていた。



「まだ風がちょっと寒いですけど。
センパイ大丈夫ですか?」


「…おー…」



真木の話を聞いてる間も、頭の中はこれからどうしよう、なんてそればっかりで





いつの間にかすぐ傍まで来ていた真木の気配に、気付かなかった。






チュ




「!?」



気付いたのは唇にそっと柔らかいものが触れてから。





「やっとこっち見た」




すぐ目の前にある真木の顔がニッと笑う。




「お…おまえ!何だよ急にっ!?」



「センパイが俺といるのに他のことばっかり考えてるからですよ」




ドカッとあたしの隣のベンチに腰を下ろす真木。




「何考えてるのか知りませんけど。

せっかくの旅行、楽しまないと損ですよ?」




そして海からあたしに視線をうつして、柔らかく笑う。





…その笑顔だけで何だか心がほどけていくような気がするあたしは



思ったより単純で



思っているよりも



…真木にハマっているのかもしれない。






「…そうだな」




金もかかってるしな!!!




「よしっじゃぁイルカのショーでも見に行くかっ!!!」



「え?でもまだ開場まで30分以上ありますよ?」



「バカ野郎!!
早く並んで一番濡れる席を取るに決まってんだろ!?

そうと決まったら行くぞ!ダッシュだ!!!」




そしてはじめて自分から


真木の手を握った。




ちょっと驚いたように真木が目を見開いた気配がして



すぐにギュッと強く握り返される。





先のことなんてどうにかなる。



とりあえず今を楽しまないと損だしな!!!




うん!この方がずっとあたしらしい!!!








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