生意気なKiss
「…ありがとう」
「なんか不思議ですね、センパイがいない高校生活っていうのも。想像できないです」
いつものように笑う真木だけど
でもいつもよりちょっと、寂しそう。
「楽しめよ!あと2年なんてあっという間だからな」
「肝に銘じておきます」
…あたしも不思議だ。
授業が終わって、真木と一緒に屋上で昼ご飯を食べて、手を繋いで帰って。
…それがもう二度とできないなんて。
「明日出発するんですよね?」
「うん。もう明後日から合宿はじまるからな」
一度見失いかけていた道。
でも真木のお蔭でもう一度向き合ってみようと思えた。
「…真木。ありがとな」
思ってもみなかった。
自分がこんなに誰かのことを、“大好き”だなんて思える日がくるなんて。
「真木のおかげですっごく楽しかったよ、高校生活」
「…それはこっちのセリフですよ」
ふっと距離をつめた真木が、クイッとあたしの顎を持ち上げる。
「…浮気禁止ですからね?」
「…こっちのセリフだ」