生意気なKiss
うるせー…
こんな時は決まっている。
視線を前に戻すと、余裕そうな表情でバッターボックスに入る真木と目があった。
真木はクッと微かに口元をあげると。
グイッとバットを堂々と天に向かって突き出して。
ワァッ―――…
ギャラリーが大きくどよめく。
ホームラン予告。
「ホント、生意気な奴…」
あたしは真木を見据え、ギュッとボールを握る手に力を込めた。
その予告。
まずは撤回させてやる。
パンッ…
「ストライク!」
ど真ん中ストレート。
真木は少し驚いたように、キャッチャーのグローブにおさまっているボールを見た。
そしてフッと笑うと、一つ大きく肩をまわして。
その余裕そうな顔
どうやったら崩れるんだよ?
「ファール!」
真木が打ったボールはわずかに逸れて。
―――これで2ストライク。
あと一回…
あたしはボールを持つ手を勢いよく振り上げ――
その瞬間、グラリと視界が歪んだ。