恋のリハビリをあなたと
朝、彼はまだ私を抱きしめたままだった。


暑苦しいけど、これをすごく心地いいと感じる自分は、相当彼に惚れ込んでいるのだろ。


私が身じろぎしていると、彼も目を覚ました。


「……おはよう。身体辛くない?」


「んー、ちょっときついから、もうしばらくこうしてて」


そう言って、彼の腕の中、彼の胸に顔を押し付けるように、彼にしがみついた。


きついなんて、本当は嘘。


ただ、彼と離れるのが惜しいと思っただけ。
寂しいと思っただけ。
もっと一緒にいたいと思っただけ。
ただ、それだけ。




「本当に、真美ちゃんってギャップがヤバイ」


……ギャップとは?さてはて、どういう意味だろう。


あまりいい意味に聞こえなかったのは、私だけだろうか。


「……ギャップ?」


私の少し、温度の下がった声に、彼は焦ったように、言葉を続けた。


「だって、普段は氷の様な目をして、ツンツンして、いかにもクールビューティって感じだろ?
その真美ちゃんが、2人のときは甘えてくれるって、そんな嬉しいギャップに、俺は心底喜んでるの」


「……ごめんね、普段冷たくて」


「俺はそんな真美ちゃんが好きだよ。
なぁ、機嫌損ねるのは辞めてくれる?」


機嫌なんて損ねてないよ、本当は。
けど、甘えてるって、はっきり言葉で言われて、恥ずかしかった。


だから、つい、こんな態度をとってしまった。


「機嫌治すから、このままで居て」


私の、小さな、けど、今は大事な我が儘。もう少し、彼の体温を感じていたい。


「はいはい、仰せの通りに」


クスクス笑いながらも、ちゃんと優しく抱きしめたままで居てくれる彼に、幸せをかみ締めた。


< 132 / 141 >

この作品をシェア

pagetop