恋のリハビリをあなたと
大地さんに連れてこられた場所には、すごく見覚えがあった。


「ここって……」


さっきまで、まともに声を出せなかったのに、だいぶ落ち着いてきたらしく、声も震えてはいなかった。


「俺の家。来るのは2度目だろ?まー、1度目は酔ってたから、あんまり覚えていないどろうけど。さぁ、どうぞ」


彼に促されるまま、家の中に足を踏み入れると、この前は気付かなかった、意外と整頓されている部屋が目に映った。そして、そのまま手を引かれ、ソファへと強制着席。


「とりあえず、座ってて。コーヒー飲める?」


黙って頷く私をソファーに座らせ、大地さんはキッチンらしきほうへ向かっていた。離された手が、少し寂しい。




って、私、何考えてるの?亜美が、昨日余計なことを言うから、変に意識しちゃうんじゃん。


大地さんは、俯いたままの私に、そっと淹れたてのコーヒーを出してくれた。


そのコーヒーをまだ無言のまま、飲むことしか出来なかった。


隠していたわけではないけど、晒したいとは思わない部分を、勝手に晒されて、動揺して、どう言っていいのか分からないのが正直なところ。


知られたい話ではなかったのは確か。





「少しは落ち着いたか?」


一言も発しない私を、隣で見守っていてくれていた大地さんが、優しく聞いてくれた。


いつもは俺様っぽい発言も多いのに、なんでこういう時だけ……


優しさが少しだけ痛い。


でも、なんか心が温かくなるというか、嬉しいし、救われる。

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