恋のリハビリをあなたと
「俺のこと嫌いになった?それとも、香坂に惚れた?」




「――は?」


予想外すぎる言葉に、間抜けな声を出してしまった。


いや、いや、いや、本気で意味が分からない。


なぜこの状況で香坂さんの名前が出てくるのか、検討もつかない。



「最近俺のこと避けてるし、それに、香坂が……」


なかなか話をしようとしない大地さんに、私は、ただ続く言葉を待った。


未だ私の上から退こうとしない彼は、すごく困ったような、悲しいような、複雑そうな表情をしていた。


「この前真美ちゃんから、手作りのお菓子もらったって、自慢して回ってた。
俺が一番近くにいたはずなのに、俺には料理すら作ってくれたこともないのにさ、何であいつなわけ?あいつが好きなのか?」


彼の言葉に、あーあれかという、数日前の光景が蘇ってきた。


彼は勘違いしている。

でも、ちゃんと説明しようとすると、彼への気持ちが漏れ出てしまいそうで、黙っていることが出来なさそうで、すぐには説明できなかった。


私の気持ちを伝えることで、今の、この心が落ち着くような、自然な状態で居られる環境が、変化してしまうのが怖い。


好きな人が出来ると、ここまで臆病になってしまうのか。


久しぶりというか、初めてとも言える感覚に、正直惑ってしまった。




あー、どうしようか。

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