恋のリハビリをあなたと
「あれは、本当は大地さんにあげようと思って作ったの。
いつもお弁当作ってもらってたし、お礼がしたくて……」


「それがどうして、香坂の手に渡るんだ?」


私の言葉に目を丸くし、けれど私の話に、納得がいっていない彼が、言葉を被せてきた。


あの日の出来事を、思い出しながら話した。



「患者さんのトランスファーが上手に出来なくて、困ってた所を助けてもらった上に、色々と方法を教えてくれたりしたの。
ちゃんとした知識がない私には、それが素直に嬉しかったから」


本当に困っていたところで助けてもらったから、ありがたかった。


けど、それ以上の感情なんてもちろんなくて、それが大地さんには伝わらないみたい。


私の嬉しかったという言葉に、眉を顰めるのは分かった。

たぶん、まだ勘違いしている。


「リハとはお昼休みの時間があの日は違ってて、私がお昼上がるころ、リハは昼休みに入ってたんだよ。
大地さんに渡そうと思って持ってたけど、渡す勇気がなくて、諦めようと思ったの。
そこでたまたまリハ室から出てきた香坂さんに出会って、さっきのお礼にって渡したの」


香坂さんに渡すのには勇気なんて一切いらなかった。


何で彼と香坂さんで違ったかなんて、そんなの分かりきっている。


「香坂さんには何も気にせず渡せたけど……大地さんのことを意識しちゃったら、話すだけですごく恥ずかしくなってきて、緊張してしまって、渡しきれなかった。
それがここ一週間逃げてた理由。
それに香坂さんがそんなこと人に言うとは思ってなかったし…」


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