目を覚ましたとき
「 麻衣は部屋にいってなさい 」
母に言われ素直に部屋に行く
直二の高校の先生が訪ねてきていた
当時、直二は学校に行っていなく
今後の進路をどうするのか
という家庭訪問できていた
壁にそっと耳を立てながら麻衣は
静かにその話を聞いていた
「 もう単位なくなるぞ ?」
「 だから行かねえつってんだろ?! 」
苦手な直二の声が響いた
低くドスのきいた声で
家中に響き渡った
麻衣の住んでいた家は
市営住宅で狭く声はすぐに聞こえる
少し怯えながら部屋の隅にいた
時間が経って先生らしき人が
いなくなってから部屋を出た
どうやら学校を辞めるということに
決まってしまったらしい
「 学校を辞めて鳶をする
そしてここに住むから。 」
いままでは半家で状態で
ここにきていた直二は
興奮覚めやらぬ様子で言葉を続けた
「 俺は母さんと暮らしたいんだよ 」
直二の母に対する愛は異常なものだった
麻衣が目にしてきたものは
言葉を失うものばかりだった
直二と母がキスを交わしていたり
抱き合っていたりする光景を
何度も何度も目撃していた
まだ小学生の麻衣でも
わかるくらい異常な愛だった