異邦人の集うカフェ(「一緒に暮らそう」番外編)
環境を変えたからと言って幸せになれたわけではない。茉実は親戚も知り合いもいない見知らぬ土地に引っ越したのだ。この一か月、彼女は自分の通う大学の教員や、買い物をする店の店員としか言葉を交わしていない。友達がいないし、できないのだ。
大学の学部に入学したのなら、お互い知らぬ者同士で同じ学科やクラブの学生と仲良くなれるだろう。しかし、彼女は他大から来た大学院生だ。研究室にいる院生は皆、同じ大学の学部から上がってきた者ばかりで、彼らの中にはなかなか入りこめない空気がある。しかも男子が多いから、友達になる相手はいない。さりとて、交友を広げるためにサークル活動を始めるような年齢でもない。それに地方というは一種の閉ざされたコミュニティなので、子どもの頃からその町で育って、その土地の学校に通っていないと、なかなか仲の良い友達ができないものだ。
毎日、茉実は大学とアパートを行き来するだけの単調な生活を繰り返している。来週、演習の授業で自分の担当区分を発表しなければならないけど、どうにもこうにも身が入らない。国立大学付属の大きな図書館に行って勉強をしようと思っても、静かすぎて逆に落ち着かない。
同級生たちはもう社会人として、新しい職場で研修を受けているのに、自分だけが世間から取り残されたように気分になっている。このままずっとこの気後れが続くのだろうか。
大学の学部に入学したのなら、お互い知らぬ者同士で同じ学科やクラブの学生と仲良くなれるだろう。しかし、彼女は他大から来た大学院生だ。研究室にいる院生は皆、同じ大学の学部から上がってきた者ばかりで、彼らの中にはなかなか入りこめない空気がある。しかも男子が多いから、友達になる相手はいない。さりとて、交友を広げるためにサークル活動を始めるような年齢でもない。それに地方というは一種の閉ざされたコミュニティなので、子どもの頃からその町で育って、その土地の学校に通っていないと、なかなか仲の良い友達ができないものだ。
毎日、茉実は大学とアパートを行き来するだけの単調な生活を繰り返している。来週、演習の授業で自分の担当区分を発表しなければならないけど、どうにもこうにも身が入らない。国立大学付属の大きな図書館に行って勉強をしようと思っても、静かすぎて逆に落ち着かない。
同級生たちはもう社会人として、新しい職場で研修を受けているのに、自分だけが世間から取り残されたように気分になっている。このままずっとこの気後れが続くのだろうか。