異邦人の集うカフェ(「一緒に暮らそう」番外編)
 しばらくして、女性がコーヒーとケーキを運んできた。
 茉実は茶器と皿を見て目を見張った。白地に青の小花がプリントされたボーンチャイナの食器だ。ワンポイントにキジの姿が描かれている。

「素敵な食器ですね。これ、どこのメーカーですか」
 彼女は思わずたずねる。
「うちの茶器をほめてくださってありがとうございます。これはバーレイ・ポッタリーというイギリスのメーカーの食器で、定番の『フェザン』というシリーズなんですよ。フェザンというのは英語でキジのことだそうです」
 女性が答える。
「へえ、そうなんですか。イギリスのメーカーなんですね」
「ええ。私は趣味と実益を兼ねて茶器を集めているんですよ。年に一度、イギリスのストーク・オン・トレントという窯業の町へ行って、気に入った茶器を買い付けてくるんです。お友達にもお土産を頼まれたりしてね。このバーレイ社のパターンは、どこか東洋的で大好きなんですよ」
「へえ。海外まで行って茶器を買ってこられるんですね」
 仕事に趣味を活かせるなんてうらやましいことだと茉実は思った。
 それから、この女性の話す言葉に土地の訛りがないことに気付いた。彼女も自分と同じよそ者であることがうかがえた。
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