異邦人の集うカフェ(「一緒に暮らそう」番外編)
茉実が選んだ本日のケーキはフワフワの紅茶のシフォンケーキだ。ケーキの横にはたっぷりのホイップクリームとミントの葉が添えられている。
久しぶりにシフォンの生地が下の上でとろけるのを感じた。あの女性の手作りのケーキだろうか。
コーヒーの方も、いつも学食で飲んでいる安物と違って、馥郁とした香りがある。
ケーキを食べ終わった後、茉実はバッグから経済学のテキストを引っ張り出した。せっかくだから、ここでしばらく授業の予習をしていこうと思った。店内は空いていて、長居して他の客を待たせる恐れもなかった。
BGMに、ソフトな音量でクラシックやジャズのナンバーが流れている。無音の図書館よりも微かに音がする空間の方が、茉実にとっては落ち着いて勉強できる。
いいカフェを見つけた。ケーキセットの値段もリーズナブルだ。ランチメニューはどんなのか知りたい。
そりゃ、東京では、デザイナーズ家具が置かれ、クラブミュージックがかかる、最先端のカフェが深夜まで営業し、なかなかどうしてお高い飲食物が提供されている。けれど、茉実が求めているのはそんなカフェではなく、気軽に利用できる落ち着いた空間なのだ。