異邦人の集うカフェ(「一緒に暮らそう」番外編)
 それから茉実は「カフェふたば」に通うようになった。

 忙しい時間帯だけ近所の主婦のパートがウェイトレスをしているようだが、その他の時間帯はあの女性が一人で切り盛りしているようだ。ランチタイムを外して行っているので、長居しても嫌がられない。茉実が飲み物と食べ物をすっかりたいらげてしまった後でも、女性がお冷をついでくれ、「ごゆっくり」と声を掛けてくれる。だから、茉実はすっかりこのカフェの常連になってしまった。見知らぬ土地に来て以来、やっと自分の居場所を見つけることができた。

 この店の常連は茉実の他にもいる。週末に現れる20代後半の夫婦は、必ずカウンターに座って女性と会話を楽しんでいる。彼らもまたよそ者で、広島から転勤でこの町に来たらしい。この町には大手電機メーカー、トイダ製作所の研究所があり、全国から研究員たちが集まってくるのだが、この転勤族もその会社の職員である。
 他にも、北九州出身のOLや北海道から転勤してきたファミリーがこの店に通っていた。時折、町の公立中学校で英語を教えている外国人教師がやってきて、女性と日本語で親しげにしゃべることもある。
 かくいう茉実もそうだが、どういうわけかこの店にはよそ者が集まってくるようだ。よそ者同士、惹かれ合う何かがあるのだろうか。
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