ルームシェア ─個性豊かな男達に求められて─
私達二人は、少しの間無言のまま歩く。また、沈黙を破ったのは私。

「楽しみだね、映画。家族以外の誰かとお出掛けするの私初めてなんだ!」

「え?そうなの?じゃあ、俺とが初めて?」

「うん!玲好君が初めて!」

「そっか…。俺が初めてか…」

えへへ、と玲好君が笑う。私も、笑い返した。

「……私ね、高校に入るまでは転校が多かったんだ。だから友達もあまり出来なかったの……」

昔の話を、私は玲好君にポツリと呟く。

「そうなの?」

「うん。小学生の時に、五回。中学生の時に、三回…転校してたんだ。馴染めた…と思ったら転校…、転校…。小学生の時、一年に二回転校した事もあった」

「……そうだったんだ……」

玲好君は、遠くを見ていた。私も、玲好君のマネをして遠くを見る。

「まぁ、転校ばかりだったから友達なんか出来なかった。出来たとしても、表だけ…。悪口言われるし…。あぁ、転校って良いこと無いなって…」

友達出来た、出来たって思ってたら、それは私だけだった。その友達だと思ってた人に悪口言われてた。

「………………」

「ずーっと、ずーっと、友達が欲しかったんだ。私」

一回だけ、転校先の中学校で好きな人が出来た。その人は、クラスで目立たない感じの男の子。

でも、ある日見たの。朝、一人で教室の花に水をあげていて…。花を見ているその男の子の目は優しかった。…私は、その男の子の目に恋をした。

今の玲好君の目のように。太陽みたいに…、優しかったの…。

「……俺は……。俺は、優花さんの友達だよ?いっそのこと、優花さんが良いなら、俺が優花さんの一番最初の友達になるよ!」

玲好君が、私に笑顔で一生懸命伝えてくれた。私は、一瞬泣きそうになる。

「……玲好君……。……えへへ、ありがとう」

「どういたしまして!」

玲好君は、前にむき直す。そして、ブツブツと。『友達から頑張ろう』と、変な事を言っていた。

「………玲好君は、転校した事ある?」

「一回だけ。中学生の時に」

「へぇ……。でも、玲好君ならすぐ、友達出来るよね。明るいし!」

「ううん。出来なかった。クラスで目立たない存在だった。いても、いなくても良かった存在」

「え?嘘!」

「本当、本当」

「想像つかないな…。玲好君が、目立たないなんて…」

「目立たないわりには、ちゃんと好きな女の子はいたな…。名前、忘れちゃったけど…」

「私も!私も名前、忘れちゃったけど好きな男の子はいたよ!」

「そうなんだ……」

「目がね。凄い優しかったの。教室の花に水をあげていた男の子が好きだった」

「あ、俺、目立たない時にその男の子と同じ事してた。早く学校に、いつも着いていたから花に水やろう…って、軽い気持ちで水やっていたら、段々花が綺麗に見えてきて…」

「へぇ……。もしかして、同一人物だったりして!」

私は、冗談を言って笑う。玲好君は、手を左右にふる。

「いやいや、そんな事は絶対ないよ!優花さんが、俺の事好きになるなんて…。そんな夢みたいな事……」

「えー、そんな事無いよ!玲好君、優しいもん!」

「いやいや、無い無い!」

「いやいや、あるある!」

私と玲好君は、くだらないけど、楽しいやり取りをしていた。そして、私と玲好君が言い合っていると、映画館に着いた。
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