優しい手①~戦国:石田三成~【短編集】
謙信の正室となってから半年――
何ら変わらない生活を送っていた桃は毎日ランニングを欠かさず、毎日もりもりご飯を食べて毘沙門天にお祈りをして、そして様々な作法を習っていた。
謙信の姉である仙桃院からはお茶や花を習い、仙桃院の息子であり謙信の養子でもある景勝からは時々剣術を習う。
「あーっ、気持ちいいーっ!沢山汗を流すのって最高!」
「も、桃姫…っ、拙者息切れが…!」
「情けないぞ幸村。これしきで息を切らすな」
「戦とは訳が違います故。ふぅ」
春日山城の近くには野原があり、土手で休憩することになると、Tシャツにハーフパンツ姿に着替えていた桃は三成に手渡された手拭いで汗を拭きながらころんと寝転がった。
越後は風が涼しくて一気に汗が引いていく。
赤とんぼが空を舞い、まだ馬上の人の三成は相変わらず涼しげな表情で辺りの警戒を怠っていなかった。
幸村は刀を携帯していなかったが、どれだけ頼れる男なのか桃は十分知っている。
それにイケメンに囲まれて、内心うきうき。
「よし、戻ろっか。謙信さんが話があるとか言ってたし。なんだろ…私なにか悪さしたのかな」
「悪さなどはしておりませぬ!しかし殿が珍しくも真面目な顔をなさっていたので少々気にはなりますが」
「謙信さん、最近戦い過ぎたってぼやいてたし…ゆっくりしててほしいんだけど」
滅多に本気を出すことのない越後の龍・上杉謙信。
純白の似合う男が本気を出せば、本人は白いままで周囲は一気に鮮烈な紅に染まるのは必至――
「謙信公の考えていることは誰にも理解できぬ。桃、戻るぞ」
「はいはいっ。幸村さん、行くよー!」
「ぎょ、御意!」
軽快な足取りで再び走り出した桃を追いかけて春日山城に着いた三成は、クロから降りると桃の肩を指で突いて天守閣を指した。
「あそこに居るだろう。早く行って早く戻って来い」
「うん、じゃあ行って来るね」
――謙信の正室になったとはいえ、自分の妻でもある桃。
独占欲は相変わらず激しいが、桃がどちらかを選ぶのではなく両方の手を選んだことを非難するつもりはない。
「…ふん、いつか離縁させて俺だけの妻にしてやる」
野心は未だ燃え上がる。
何ら変わらない生活を送っていた桃は毎日ランニングを欠かさず、毎日もりもりご飯を食べて毘沙門天にお祈りをして、そして様々な作法を習っていた。
謙信の姉である仙桃院からはお茶や花を習い、仙桃院の息子であり謙信の養子でもある景勝からは時々剣術を習う。
「あーっ、気持ちいいーっ!沢山汗を流すのって最高!」
「も、桃姫…っ、拙者息切れが…!」
「情けないぞ幸村。これしきで息を切らすな」
「戦とは訳が違います故。ふぅ」
春日山城の近くには野原があり、土手で休憩することになると、Tシャツにハーフパンツ姿に着替えていた桃は三成に手渡された手拭いで汗を拭きながらころんと寝転がった。
越後は風が涼しくて一気に汗が引いていく。
赤とんぼが空を舞い、まだ馬上の人の三成は相変わらず涼しげな表情で辺りの警戒を怠っていなかった。
幸村は刀を携帯していなかったが、どれだけ頼れる男なのか桃は十分知っている。
それにイケメンに囲まれて、内心うきうき。
「よし、戻ろっか。謙信さんが話があるとか言ってたし。なんだろ…私なにか悪さしたのかな」
「悪さなどはしておりませぬ!しかし殿が珍しくも真面目な顔をなさっていたので少々気にはなりますが」
「謙信さん、最近戦い過ぎたってぼやいてたし…ゆっくりしててほしいんだけど」
滅多に本気を出すことのない越後の龍・上杉謙信。
純白の似合う男が本気を出せば、本人は白いままで周囲は一気に鮮烈な紅に染まるのは必至――
「謙信公の考えていることは誰にも理解できぬ。桃、戻るぞ」
「はいはいっ。幸村さん、行くよー!」
「ぎょ、御意!」
軽快な足取りで再び走り出した桃を追いかけて春日山城に着いた三成は、クロから降りると桃の肩を指で突いて天守閣を指した。
「あそこに居るだろう。早く行って早く戻って来い」
「うん、じゃあ行って来るね」
――謙信の正室になったとはいえ、自分の妻でもある桃。
独占欲は相変わらず激しいが、桃がどちらかを選ぶのではなく両方の手を選んだことを非難するつもりはない。
「…ふん、いつか離縁させて俺だけの妻にしてやる」
野心は未だ燃え上がる。