悪魔と天使
『セイレーン!!とり憑いている者を開放しなさい!!』


あぁ、これは夢だ。


ガブリィは直感的にそう悟った。


今日、奴から聞いた話を捩曲げて夢として見ているのだ、と。


何故、奴が気になる?


考えながらも夢は続く。


『ダーリンには取り憑いてないわよ!』


『ハニーは俺に取り憑いてるわけじゃない!』


『え?恋人同士ですか?』


これは私………だろうか?


かなり、髪が伸びている。そして、口調が違う。


だが、顔は一緒だった。


私の願望だろうか?


今度は瞬時に場面が変わる。


そこは神の間。


『それで、諦めたと』


『バル……悪魔にも良い奴はいるのよ』


ゼウスに向かい刃向かっていた自分に驚きを隠せないガブリィ。


『神の教えに従わない者を見ただろう』


夢の中でもゼウスは淡々と喋る。


『マリーも………なの?』


『堕天使も同様だ』


『従わないから消すの?なら、子供と同じよ』


『仕方がない。お前には力をやろう』


『引き換えは心でしょ。要らないわよ』


『マリーに逢わせてやると言ったら?』


『…………!』


『交渉成立』


ゼウスが手をかざす。


『逢わせてやるとも。だが、逢ったら逢ったで殺しあいだがな』


『マリーに従えば良かった!!あの人と歩んでいれば後悔などしなかった!!』


夢の中のガブリィから光る何かが出てくる。


また、瞬時に場面が変わる。


ガブリィの視点が客観から主観に変わる。


ギシ……ギシ……と船倉を渡り、通路を渡り、その間に船員を殺し、船長室にゆっくりと歩く。


『あんたは………!何故!祝福してくれたじゃないか!!』


ガブリィの口が動く。


『悪魔と悪魔に力貸す者に祝福なぞするか』


それは昔見逃した二人。


『貴様の方が悪魔じゃない……』


息も絶え絶えに言われた言葉。


手が見れた。周りの壁も。


黒く変色した血。


血だらけ。


血、血、血、血、ち、チ……
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