悪魔と天使
ガブリィは不機嫌だった。


彼女は自分が天使だと言っても通じぬ相手が地上にいるのが信じられない様子だった。


「ほら、ガブリィ。お前が食いたいって言ったんだぞ」


ずいっと木の枝に刺したこんがりと焼けた肉を差し出すマルコ。


無言で受け取り、無言で頬張る。


「…………美味い」


「味付けは得意なんだよ」


「ほんふぉーだ。ふごひでふぁにき(本当だ。凄いぜ兄貴)」


「食うか喋るかどっちかにしろ!」


マリクは食事に専念したようで、黙々と食べ始める。


「……………悪魔」


「ん?」


「ここでは………天使とか悪魔とか…無意味なのか?」


マルコはさぁな、と言った。


「子供や…年寄りだけだろうな。少なくとも、この村は天使は信じないらしいな」


「悪魔……お前は…信じてもらえると思うか?」


「はっ………んなこと言っちまったら、ここ追い出されんのがオチだ」


そうか…と呟き、肉を食うガブリィ。


「そういや、いつまで付いてくんだ?」


「ん?らっふぇ……」


「お前も食うか喋るかどっちかにしろ」


「……お前が連れて来たのだろう。私はかなり迷惑なんだ。だがな、帰れない。地上の事も知らない。生活出来ずに飢え死ぬ可能性の方が高い。…………それにな」


「それに?なんだ、早く言え」


「それに……お前といると何故だか安心する。ムカつくことに」


その瞬間、マルコの顔が歪む。


だが、それも一瞬で軽く「そうか」と頷いて、自分も肉を口に運んだ。
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