カワキ
車で30分。この高級住宅街の街並みはいつ来ても気取っていて俺は好きになれないが、あの女が住む家はその中でも特に目立つ洋館のような白い家だった。
車を門の前に停めてチャイムをならすと門が開いた。玄関前まで広い庭を横切って車を入れる。そしてこのバカげたサイズの家の主が出て来るのを待った。

「裸じゃなくてごめんなさいね。」

美しい顔に嘲笑ともとれる笑みを浮かべて女は立っていた。優妃。この美しい悪魔の名前だ。

「少し残念ですが何処か出かけますか?」

助手席のドアを開けると優妃はまるでファーストレディの様な身のこなしでゆっくりと車に乗り込んだ。

「食事は?何かめしあがりますか?」

俺が普段使うことの無い 言葉をかけてやってもこの女王様にはあたりまえなのだからその美麗な眉一つうごかさない。

「えぇ。そうね。和食がたべたいわ。とびきりの。」
俺はこの女の為に常に高級と言われる店は押さえてあった。その中の料亭の名を告げると優妃は満足そうにうなずいた。
車は悪魔の城を滑り出た。
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