水面(みなも)の月
その女の子は、何処かの高校の制服を着ていた。
腰程まである漆黒の長い髪を下ろし、顔立ちも整った、かなりの美少女だった。
年は僕と同じくらいだが、少し大人びて見える。仄暗い月明かりと街灯に照らされ、少しだけ近寄り難い雰囲気を醸し出していた。

ただひとつ気になるのは、彼女女の瞳がその髪のように、吸い込まれそうなほど黒いこと…


(地元の子かな?)


だとしたら、同じ学校の可能性が高い。何故か少し嬉しく思っている自分がいた。

ずっと見つめていると、彼女が僕に向かって、少し微笑んだ…ような気がした。
気がした、というのは、僕が見とれているうちに、彼女は何処かに消えてしまっていたからだ。



少女の居なくなった池は、妖しく、静かに揺れていた…
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