水面(みなも)の月
「ただいま。母さん、連れて来たよ。」


玄関で言うと、廊下の奥から聞こえるスリッパの音がやけに響いた気がした。



「いらっしゃい。狭いところだけど、どうぞゆっくりして行って。」

母は、笑顔で迎える。

珠姫と、目を合わせないように…



「すみません…お邪魔します。」

珠姫は、軽く頭を下げると、先に進んでいた僕について部屋に入ろうとした。


その時、珠姫が一瞬ぱっと目線を上げた。


母と珠姫の視線がぶつかる。

そして次の瞬間、信じられないような言葉が僕の耳に届いた。




何よりも、重みのある言葉。


< 46 / 88 >

この作品をシェア

pagetop