水面(みなも)の月
少女を思い出しながら歩いていると、気付けば家の前まで辿り着いていた。何なんだ?今日は一体…あんなに道は分からなかった筈なのに…


とにかく、慣れないところを歩き回ったのと、判らないことがあるせいで、腹は減ったし、疲れもピークだ。疲労のせいかやけに重く感じる玄関の扉を開け、家に入った。


「ただいま〜…」

「あら、お帰り。随分遅かったのねぇ。もしかして、迷子にでもなってたの?」
ニヤニヤと笑いながら母が言う。

「そんなわけないだろ」
少しムッとした。
まぁ実際それに近いものはあったが、馬鹿にされるのが嫌なので言わなかった。


夕食のカレーを掻き込んでいるとき、母が突然言った。
「お母さんの知り合いに会わなかった?」
「は?」
こんなところに母さんの知り合いなんているのか?


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