無花果
「種果、ごめんなさい。・・・・お母さん、どうかしてたわ。・・・あなたたちが怪我したって聞いて・・・それで気が動転してたのよ」

母が姉に手を差し伸べようとしたのに、姉はその手をすり抜けるように避けて、受付の人に

「血が出ちゃったからティッシュください」

とはっきりとした口調で頼んでいた。

その後、姉はすぐに処置室にまた入って行った。


その日から、うちはすっかり変わってしまった。

4年前、母と義父が再婚した直後は少しだけぎこちなかったけど、姉が母にすぐに懐いたことから、本当の家族のようになった。

娘が欲しかった母は姉のことを可愛がっていたから、何も問題ないと思っていたのに、母には姉の母親に対する何かが残っていたんだ。

日に日に似て来る姉の姿に、既にこの世にはいない人を見て不安を感じていたんだ。

それがオレが怪我をしたことで、全てを姉にぶちまけてしまった。

姉さんには何の罪も無いのに。

オレが全てを壊してしまった。
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