無花果
黙っていられるわけがない、好きな人が暴力を振るわれたんだ。

それが例え、実の親だとしても許せるわけが無い。

「天耶、良いよ。私が悪いんだから・・・」

姉はゆっくりと立ち上がる。長い髪耳にかけて義父を見つめる姿は、どこか妖しい雰囲気を思っていた。

「私はもう子どもじゃない。お父さんたちがどんなに体裁を繕っても、お母さんが自殺したのも事実。
原因も分かってる。近所にだって知れ渡ってる。知られてないって思ってるのはお父さんたちだけだよ」

姉の言葉に義父は絶句する。

「私に変な気を使わないで。高校卒業したから、家を出るだけのこと。だから安心して」

そのまま姉はオレたちを置いて部屋に入って行った。オレは、慌てて姉を追いかけた。

「姉さん、入って良い?」

相手の許可も取らずにオレは、姉の部屋の中に入ってしまった。

「姉さん大丈夫?」

「うん」

頬は腫れて熱を持ち始めているくせに、姉は大丈夫だと笑う。

変わってない。その無理した優しさも。

本当なら、痛かったはずだ。あの時も。泣きたかったはずなのに。

「ごめんね。変なこと聞かせて・・・。でも、天耶にもちゃんと知っておいて貰ったほうが良い時期だよね」

もう、天耶も高校生だからね。

姉はベッドの上を指差して座るように促してきた。

「私の本当のお母さんは自殺してるの。私が3歳の時に・・・。私が見つけた」

姉はつらそうな顔をしているけど、話を続けた。
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