無花果
「あぁ。さっき」

「ご飯食べたのかしら」

「食べて来たって」

「そうなの」

母はどこか切ない顔をした。

その顔がいたたまれなくて、オレは教科書を片付け始めた。

「もう、寝るから」

言ってリビングをでようとした時、姉が二階から降りてきた。

手にはタオルを持っている。

「種果、お帰り」

母が声をかけると、姉は戸惑ったような顔を一瞬だけ見せたあと、一礼して風呂場に行ってしまった。
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