無花果
一度、芽吹いた疑心の芽はそう簡単に枯れはしない。
10年前、姉の疑心の種が芽吹いたんだ。

オレが6才で、

姉は8才だった。

オレは姉と同じ小学校に通えるのが嬉しかった。
放課後、母の迎えを待っていながら二人で、ジャングルジムで遊んでいた。

高い所から見える景色にオレは興奮した。

「天耶、危ないよ!」

姉は、何度もそう言っていたのにオレは聞かなかった。

「大丈夫!お姉ちゃん見て」

オレは掴んでいた手を離して、細い棒の上に立った。
姉の男友達の3人がやってるみたいに。

そしたら、姉が褒めてくれると思った。

自分の方が小さいのに、5年生と同じことが出来るって

「天耶、危ないよ。おりておいで」

姉は、それしか言わなくて

オレは悔しくなって、そのままジャングルジムの上を歩き始める。
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