無花果
姉は後頭部と右眉の下を切っていた。頭の傷は縫う程ではなかったらしいが、顔の傷はオレの顔が直撃したらしく、3針も縫う怪我を負ってしまった。

頭に包帯を巻き、右目に眼帯をしている姉は痛々しいが、彼女は処置の間、一度も泣くことも声もあげることもなかった。

「ごめんね、お姉ちゃん」

「良いよ。天耶が無事なら良いんだよ」

オレは姉が庇ってくれたから掠り傷ですんだ。
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