僕が愛した君と夏。
最終宣告は、七月の頭。はっきりした日にちは覚えていないが、その日は珍しく雨が降った。
職員室の中はジメジメしていて暗い。コーヒーとタバコの臭いが制服にこびりつきそうだった。

「いつになったら決まるんだ?」

書類に埋もれながら担任が聞いてくる。
下を向いて、担任の顔を見ないようにした。
とんとんとんとんと、ペンで机を叩く音だけが響いてイライラする。

「黙ってないで何か言え」

どうせ、
こいつらは学校が大事なんだ。
就職進学率が100%を売りにしてるから、それを達成させなきゃならない。
ただ、それだけ。俺たちはそのためのコマで、俺はそのためには邪魔な存在なんだ。

「あのな、俺がお前と同じ時期にも…」

溜息とともに昔話が始まった。こいつはこっからが長い。くだらないし、暑苦しいし、本当に嫌いだ。
顔をやっと少しあげた。
職員室の窓の外、校庭が見える。
走り回ってる奴らはみんな半袖だ。

「…、」

俺だってわかってる。
みんなが先に進んで、俺だけ取り残されていることくらい。
わかってるんだ。心のどこかではちゃんと焦ってるんだ。
早く俺も半袖にならないと。
いくら袖をまくりあげたところでこれからやってくる暑さには勝てはしないし、結局、長袖は長袖なんだ。
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