【完】愛し君へ、愛の口づけを
「え!?」
俺の腕の中で莉央もわたわたしている。
「お兄ちゃん・・・?」
「莉央、ごめん」
「お、お兄ちゃんから謝罪の言葉なんて聞いたことない」
「・・・ごめん」
「何なのかよく分かんないけど、私は大丈夫だから!ね?」
「・・・莉央」
「ちょ、ちょっとお兄ちゃん?どうしたの?本当に」
俺はわけもわからず泣いていた。
子供のようにわんわんと。
身長の低い莉央に頭をよしよしと撫でられながら
俺は泣き崩れた。
走馬灯のように
過去の記憶が走り始める。
女を人間として見なくなった、あの忌まわしい過去の記憶。
思い出したくなくて
思い出さないようにしてきた。
『男?男なんてただの性処理道具よ』
・・・愛していた人間に裏切られれば
誰だって底辺に落ちていく。
典型的なその底辺人は俺だ。