【完】愛し君へ、愛の口づけを
「なんだよそれ・・・」
「私、多分お兄ちゃんを好きって事気付きたくなくて、知らないふりしてた」
「・・・」
「気付いてたの。自分は悲劇のヒロイン。お兄ちゃんの性道具にされているかわいそうな妹を・・・演じてたって。でも、私はお兄ちゃんを愛してた。いつの間にか、お兄ちゃんの事を」
「好きになってた?愛してた?嘘はいらない。今だけの言葉なんだろ。・・・分かってるよ。お前を傷つけたのは俺だ。だから今安心させて逃げようとしてる事くらいなぁ!?」
俺は怒鳴り声をあげた。
息は荒くなっている。
莉央が俺を好きとかあり得ない。
あり得るはずがない。
ここまでひどい事をしておいて
好きになってくれるはずがない。
目の前で人が死ぬのを見たくなくて、止めただけだ。
信じない。
莉央の言葉に耳を傾けたら終わりだ。
「じゃあいつ好きになったんだよ。具体的に言え。言えねぇだろ?そうだよなぁ・・・今だけなんだもんな?そこまで考えてなかったんだろ?」
「違う・・・本当に・・・!」
「どうして俺が好きになれるんだよ!?ここまでしたんだぞ?最低すぎるだろ。なのに好きになれるわけないだろうが!」
「話を聞いて・・・お兄ちゃん」
「早く解放されて翔のところに行きたいんだろ?行かせない。絶対に行かせない。お前は俺だけのものだ。渡さない」
・・・本当はこんな言葉を言いたいわけじゃない。
俺は誰だ。
莉央、助けてくれ。
・・・俺はお前をもう傷つけたくない。