【完】愛し君へ、愛の口づけを
「どうしたら信じてくれる?」
「信じてどうする。裏切られた時の事なんて考えたくもない」
「私は裏切らないよ」
「確証なんてどこにもないだろ」
「・・・じゃあ私は二度とこの家を出ない。ずっとこうやって縛ってくれててもいい。ただ、お兄ちゃんを好きって言う事・・・信じてほしい」
「・・・」
「愛してるよお兄ちゃん」
「・・・馬鹿野郎。俺の事大嫌いだって罵ってくれれば、俺は・・・」
ピンポーン
久しく鳴らなかったはずのチャイム音。
「・・・お兄ちゃん。出ていいよ」
「分かった。でも、莉央・・・」
「家の中に上げなければ大丈夫!」
莉央は俺に笑顔を向けていた。
しばらく見ていなかったあの笑顔を。
玄関の扉を開けると、
そこには歳が結構いってそうなおばあさんが立っていた。
「・・・えと、なんっすか」
「恭ちゃん・・・」
「え?」
「恭ちゃん・・・」
俺をこの呼び方で呼ぶのは、この世で一人しかいない。