【完】愛し君へ、愛の口づけを
忌まわしい過去
「こっちはお前の部屋。俺こっちだから」
使われてなかった部屋に案内し、俺はリビング兼俺のベッドがある場所に戻ろうとした。
「お兄ちゃん、こんなに広い所に一人で住んでたんですね」
「・・・いきなり何」
「一人暮らし用のアパートで義理の兄妹の部屋で住みなさいってお父さんに言われた時は、すごく驚いたし不安だったし・・・どんなに狭い所なんだろうって思っちゃってたんです」
確かに、
俺の母親が借りているこのアパートは一人暮らし用と言っておきながら
四人家族でも住めそうな広さだ。
「でもすごく広くて・・・一人って寂しくなかったですか?」
「別に」
「・・・私は寂しいです。こんな場所に一人なんて」
さっきまでの笑顔が嘘のように
寂しそうな、切なそうな顔をしてうつむく。
「恭介・・・さん」
「あ?」
「・・・私は捨てられたんでしょうか」
きっと無理に明るくしてたんだろう。
だから俺は
それを壊したくなったんだ。
・・・そう理解した。