【完】愛し君へ、愛の口づけを


マイナス思考に拍車をかけるように
その日のうちに翔と莉央のツーショットを見かけた。



・・・莉央が笑っている。

翔の隣で、楽しそうに。



まるで翔の事を好きだった頃の莉央のように・・・。


何を話しているのかは分からない。


だけどこれだけは言える。





俺の胸が悲鳴をあげているという事。


辛い、苦しい、助けて。

そんな言葉が聞こえてくるようだ。




「・・・あ」


莉央は俺の姿を見るなり、罰が悪そうな顔になった。


そしてすぐ目を逸らす。


隣にいた翔も俺の方を見る。



翔は大きな口を開け、俺に何かを伝えようとしてきた。










『り お う は』


翔の口の動きを必死に読みとる。


『か え し て』


心臓の音がうるさくなる。


『い た だ き ま し た』




ドクンッドクンッ




"莉央は返していただきました"


これが翔の言葉だった。
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