【完】愛し君へ、愛の口づけを
愛し君へ、愛の口づけを
俺の気持ちとは裏腹に
外の世界は明るく、からっと晴れている。
心の中が大嵐の俺とは大違いだ。
「・・・お兄ちゃん」
俺の目の前には、椅子に縛られた莉央。
そして、俺の右手には処分しきれなかったあのはさみ。
「莉央」
俺は莉央の名前を呼ぶ事しかできなかった。
他に何も言う事はなかった。
あるとすれば、"愛している"これだけ。
あの時
俺は翔に掴みかかり、莉央の手を奪った。
無理やり家に連れて帰り、強く強く抱きしめた。
莉央は何度も抵抗してきた。
俺にはもう自分の最愛の人の幸せだけを願って生きていくなんてできない。
これ以上自分の幸せを手放すことなんてできない。
ここは漫画やアニメの世界じゃない。
リアルの世界だから思える本当の事。
・・・自分が幸せになれればそれでいいんだ。