【完】愛し君へ、愛の口づけを
「あいつは、あいつは最低な男なんだよ」
「翔君にお兄ちゃんの何が分かるの?・・・痛いからはなして」
翔君は一層力を込め、私の肩を掴んだ。
「痛いっ・・・」
「あいつは・・・俺の姉さんを傷つけた最低な男だ・・・!」
「姉さん・・・?」
「そうだよ、俺の姉さんをだ」
「翔君にお姉さんなんていたの?」
「今は別々に暮らしてるけど、ちゃんと血のつながった姉さんがいる。姉さんはあいつのせいで・・・」
「お兄ちゃんが・・・何したって言うの」
翔君の口から聞いた事は、
私にとって、辛いことだった。
翔君のお姉さんの名前は城田里奈さん。
一回り歳が違っているけど、小さい頃から可愛がってくれた優しいお姉さんだったらしい。
翔君の家はお父さんしかいなくて、私の家もそうだったから少し意気投合したのもあった。
でも、まさかお姉さんがいたとは知らなかった。
翔君たちの両親が離婚する前、
里奈さんとお兄ちゃんは歳が違いながらも付き合っていたらしい。
すごく仲が良くて、
弟の翔君でさえ嫉妬をするほど。
だけど、
ある日を境にして里奈さんはお兄ちゃんと別れた。
そして・・・お兄ちゃんの本当のお父さんと結婚したらしい。
翔君は何年かたってようやくお兄ちゃんを高校で見つけた。
里奈さんをどうして手放したりしたのかと聞くために。
・・・その頃のお兄ちゃんは、
女をとっかえひっかえ、ろくでもない人だった。
噂では本当のお母さんとも関係を持っていたとか。