【完】愛し君へ、愛の口づけを
翔君はそれを見て
心の底から怒りを覚えた。
あんなにも里奈さんと一緒にいて、里奈さんを大切に思っていたはずなのに。
お兄ちゃんが里奈さんを捨てた。
傷心の里奈さんをきっとお兄ちゃんのお父さんは
上手い具合に誘って無理やり結婚したんだと翔君は思った。
そんなお兄ちゃんを
すぐにでも殴りかかりたい気持ちでいっぱいだったらしい。
・・・かといって、そんな事できるわけもない。
だからずっと冷たい目でお兄ちゃんを見ていた。
そんな時、
仲の良かった、好いていた私がお兄ちゃんの義理の妹だという事が分かった。
私が一時学校へ来なくなった時、
お兄ちゃんに何かされているんじゃないかと気が気じゃなかった翔君。
そこはすごく優しいなって、
私の好きになった翔君なんだなって思った。
でも・・・。
「気付いたんだ。今なら莉央を利用できるって」
「利用・・・?」
「あいつに何かされてるんだろ?だったらそれを言ってくれよ。そうすればそれを学校側に全部バラして、最悪な事なら警察沙汰だ。・・・あいつも終わりって筋書き」
「・・・何それ」
「莉央の事は確かに好きだよ。もちろんあいつがいなくなって、消え去れば俺は莉央と幸せに平和な毎日を過ごす事も考えてる」
「でも、利用って」
「言い方が悪かったかな?・・・細かい事は気にする必要なんてないよ」