視線の先


この時間のこの電車乗るの始めて。


こんなにガラガラなんだー…。



電車に乗り込み、ギターを下ろして座る。


さっき広瀬先輩から引き継いだ会長ノートを開く。


丁寧に書かれた文字がびっしり。


「大変そー…。」



夢中でそのノートを読んでいて、隣に人が座った事になんて気づかなかった。




気づいたときには、最寄り駅の一個前だった。


ハッとして、降りる準備をする為にギターに触れると、その先に紺色のエナメルバッグが見えた。


ドキっ…。



るいと同じエナメルバッグ。



いやいや、まさか。


彼はこの駅まで来ないって。


そんなわけないよ。


って思いつつも、少し期待してバッグの持ち主の顔をみた。




ほら、やっぱり違ったじゃん。



持ち主さんの隣には、同じく制服の髪の毛を少し茶色に染めたイケメンが座っていて、



「そーいえばさっきのるいの話さー、」


なんて言ったから。



もしかしたら、さっきまでそこにるいが居たんじゃないかって。


私の事が少しでも視界に入ったんじゃないかって。


そう思うとドキドキが止まらなかった。


気づけよ自分。


同時に、自分の視野の狭さを憎んだ。






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