カローナ姫の黒猫
*第1章
*姫と猫の出会い
―――…
「姫様!!カローナ姫様!!シルヴィ様がお呼びです!!おはやく、着替えてくださいまし」
少し怒鳴ったような声で叫んでいるのは、30代くらいの綺麗な女の人。
メイド服を着ている所を見ると、どこかの屋敷に使えている侍女なのだろう。
そして。
「…もうっ。私は会いたくないって言ってるのに…いい加減にしてって言ってよ、リリス!」
そんな侍女リリスに向かってそうぼやいているのが、このサァーフィア国、第1王女のカローナ・ローリンス。
今年で16歳になる可愛らしい少女だ。
ふわふわの金髪を腰まで伸ばし。
白い肌にバラ色の頬。くるんと上向きに上がったまつ毛。
瞳は濃い青色をしていて、まるで童話に出てくるお姫様のようだ。
「そんなことリリスの口からは申し上げることができません!シルヴィ様は、カローナ様の婚約者なんですよ!もう少し自覚をもってくださいませ!」